夏の風が僕たちを包んでくれた
40歳になった時、もう人生の半分以上が過ぎたと感じた。
まだ十代の頃なら夢も見れたが、この歳になると面白いと思えることはどこにあるということもない。
十年前、結婚を前提に交際していた女性もいたが、結婚式の式場を探す頃になって「破談」を持ちかけられた。
とてもキレイな女性だったし、会社の上司から紹介された家柄も申し分ない相手だったが、当の本人は乗り気ではなかったらしい。
しかも、後々になって耳にした話ではあるが、その女性は家族に言い出せないでいた恋人がいたそうだ。
いずれしても、なんとなく結婚するんだと思っていたから、その時の破談で何かポッカリと大きな穴ができた気分になってしまった。
それは何も悲観的になったということではなく、30歳くらいには結婚をして、その後は子どもにも授かり、そしていつか定年を迎えることには夫婦の時間を大切にするというような青写真が浮かんでいた。
でも、そればかりが人生ではないし、どうせならもっと好きなように生きても良いんじゃないかと思えたのもあの頃だ。
学生時代の僕は目立たない存在だった。
なぜかクラスでも人気のある男子生徒が僕を誘ってくれたから、中学時代に少しは青春らしいエピソードもある。
クラスでも人気の女子だって、彼からの誘いなら断ったりしないからだ。
もちろん僕はダブルデートをする時も彼の側にいる存在でしかない。
だいたい、彼と美人が並んで歩き、僕は彼女が連れてきた友だちと過ごすことが多い。
でもそんな僕でも秘かに恋心を抱いた女性がいた。
それが付き添い役で来ていたこともある「沢木あかり」であった。
とは言え、二人きりで話をしたのもダブルデート中の一日だけで、それ以外に彼女と会話をした経験はなかった。